精神訪問看護をしていると、表面だけでは分からない人生にたくさん出会います。
一見すると穏やかに見える方でも、実は長い年月の中で大きな苦しみや孤独を抱えておられることがあります。反対に、自分ではしんどさを抱えながら日々を過ごしていても、相手からは「恵まれている」「キラキラして見える」と言われることもあります。
精神訪問看護の仕事をしていると、人は見た目だけでは分からない、ということを何度も実感します。今回は、訪問の中で改めて感じた「人の人生の重さ」について書きたいと思います。
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精神訪問看護の現場で感じること
精神訪問看護の現場では、本当にさまざまな人生を背負ってこられた方と出会います。
病気や症状だけではなく、これまでの家庭環境、人間関係、結婚、離婚、仕事、親子関係など、その方の背景には簡単には言葉にできない出来事が積み重なっています。
普段の会話の中では明るく見える方でも、少しずつ話を聞いていくと、胸が詰まるような過去を抱えておられることがあります。精神訪問看護は、ただ体調や服薬状況を確認するだけではなく、その方の人生そのものに触れる仕事なのだと感じます。
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「あなたは別格や」と言われて驚いたこと
ある患者さんから、私は以前こんな言葉を言われたことがあります。
「あなたは別格や」
「あなたはキラキラして見える」
最初は、その意味が正直よく分かりませんでした。自分では日々の生活に必死で、仕事のこと、子育てのこと、お金のこと、体のことなど、悩みが全くないわけではありません。むしろ、しんどいなと思う日もたくさんあります。
けれど、その方から見ると、私は恵まれているように見えたのだと思います。子どもがいて、家族がいて、働いていて、支えてくれる両親や姉夫婦がいる。そういったものが、その方にはまぶしく見えていたのだと思いました。
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その方の人生を聞いて感じたこと
その方は63歳で、これまでの人生の中でとても複雑な背景を抱えてこられた方でした。
兄弟がおられても、一人だけ引き離されるような形で育ったこと。家庭の事情が複雑で、自分の居場所を感じにくかったこと。結婚生活でも苦労があり、子どもにも恵まれなかったこと。離婚手続きも簡単ではなく、年齢を重ねてもなお心の中に消えない寂しさを抱えておられました。
私はその方のお話を聞きながら、人の人生の重さは、見た目だけでは本当に分からないと改めて感じました。
私から見ると、その方は年齢を重ねても肌が綺麗で、落ち着いた雰囲気があり、羨ましく見える部分もありました。でも、その方はその方で、私には見えていなかった深い苦しみを抱えておられたのです。
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人は自分にないものを見てしまう
人はどうしても、自分にないものを持っている人を見てしまうのだと思います。
私は自分の傷やしんどさに目が向きます。体の傷、肌の悩み、仕事の疲れ、将来への不安など、自分の中では気になることがたくさんあります。
でも相手からすると、私には家族がいて、子どもがいて、仕事があって、支えてくれる人がいる。その「あるもの」が強く見えていたのだと思います。
逆に私は、その方の持っている落ち着きや見た目の綺麗さ、静かな雰囲気を見ていました。
お互いに、自分にはないものを見ていたのだと思うと、人の見え方というのは本当に不思議だと感じます。
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今あるものに気づくことの大切さ
この出来事を通して、私は改めて、自分が今持っているものにもっと感謝しなければいけないなと思いました。
38歳から看護学校に通えたことも、子どもを育てながら働けていることも、息子を大学に行かせられていることも、自分一人の力だけではありませんでした。
両親がいてくれたこと。姉夫婦が支えてくれたこと。周りの環境があったこと。そういう支えがあったからこそ、今の自分があります。
日々忙しく過ごしていると、つい「足りないもの」にばかり目が向きがちです。でも本当は、すでにたくさんのものを与えられているのかもしれません。
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精神訪問看護は人生に触れる仕事
精神訪問看護は、単に病気を見る仕事ではなく、その方の人生に触れる仕事だと感じます。
服薬確認や体調確認はもちろん大切ですが、それ以上に、その方がどういう人生を歩んできたのか、何に苦しみ、何を失い、何を大切にしてきたのかに触れる場面が多くあります。
だからこそ、この仕事をしていると、こちらが学ばせてもらうことも本当に多いです。
誰かの人生を簡単に分かったつもりになってはいけないこと。見えているものだけで判断してはいけないこと。そして、自分が持っているものにも、もっと目を向けるべきだということ。
精神訪問看護をしていると、そんな当たり前だけれど大切なことを何度も思い出させてもらいます。
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まとめ
人は、悩みを抱えていても、他人からはキラキラして見えることがあります。逆に、穏やかに見える人でも、想像を超えるような重い人生を背負っておられることがあります。
精神訪問看護の現場では、そうした「見えないもの」に触れる機会が多くあります。そのたびに、人の人生は本当に深く、重く、簡単には語れないものだと感じます。
だからこそ、表面だけで人を判断せず、自分が今持っているものにも感謝しながら、これからも一人ひとりと向き合っていきたいと思います。

